月に4〜5冊は本を読む。技術書は半分もなくて、大半はSFかノンフィクションだ。仕事の役に立つかと聞かれると、直接的にはあまり立たない。それでも読書をやめる気にはならないし、むしろエンジニアという仕事にとって本を読む習慣は地味に効いていると感じている。
SFを読んでいて得るものは、突飛な発想そのものよりも「前提を疑う」訓練だと思う。設計のレビューをしていると、誰も疑問に思わずに積み上がった前提が後から足かせになるケースをよく見る。当たり前を当たり前と思わない癖は、フィクションの世界を何度も歩き回ることで少しずつ養われる気がしている。
ノンフィクションが教えてくれる時間感覚
ノンフィクションからは、技術や産業が思ったより長い時間軸で動いているという感覚を教わる。今話題になっている技術トレンドも、たいていは十年単位の助走があって今の形になっている。目先のニュースに一喜一憂しがちな業界にいるからこそ、長い時間軸で物事を見る視点は意識して持ち続けたい。
もちろん、読書量が多ければ良いエンジニアになれるという単純な話ではない。実装力や設計力は、結局のところ手を動かした量に比例する部分が大きい。ただ、手を動かすだけでは磨かれない判断力のようなものがあって、それを補ってくれるのが読書なのだと思う。
音楽を聴くこととも少し似ていると思う。ジャズを聴いていると、決まったコード進行の中で演奏者がどう解釈を変えるかに耳が向くようになる。同じ「正解」がない中で、自分なりの筋を通す訓練という意味では、読書も演奏も設計レビューも根っこは同じ感覚を使っている気がする。
職場の若手にも、時間があれば技術書以外も読んでみてほしいと伝えている。押し付けるつもりはないが、技術書だけを読んでいると、どうしても「正しいやり方」を探す発想に偏りがちになる。小説やノンフィクションは、答えのない問いに付き合う体力をつけてくれる、数少ない訓練場だと思っている。
読んだ本の感想を短くメモに残す習慣も続けている。数行程度の簡単なものだが、後から見返すと、その時々の自分が何に引っかかっていたかが見えてきて面白い。技術的な学びをドキュメントに残すのと同じ感覚で、読書の記録も自分なりの資産になっている気がしている。
忙しい時期ほど本から遠ざかりがちだが、そういうときこそ数ページでもいいから開くようにしている。積読が増えていくのは少し気が重いが、それも含めて自分にとっては悪くない習慣だと思っている。
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